オルミエント ® (バリシチニブ)
以下は適正使用情報として、本邦における承認事項(用法・用量、適応、剤形など)以外の情報が含まれる場合がございます。薬剤の使用に際しては、製品情報ページにある最新の電子化された添付文書をご確認ください。
<COVID-19>オルミエント(バリシチニブ)のACTT-2試験における安全性は ?
ACTT-2試験におけるの安全性の結果は以下のとおりです。
[解説]
※本剤は、国内外の試験成績に基づいて承認されました。このため、一部国内の承認効能又は効果、用法及び用量と異なる成績が含まれています。
<新型コロナウイルス感染症:COVID-19>
18歳以上のSARS-CoV-2による肺炎患者1033例(日本人1例を含む)を対象にバリシチニブ+レムデシビル群の有効性及び安全性をプラセボ+レムデシビル群と比較検討した国際共同、アダプティブ、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間試験であるACTT-2試験における安全性の結果は以下のとおりです。
有害事象の重症度グレード
ACTT-2試験では、Division of AIDS(DAIDS)Table for Grading the Severity of Adult and Pediatric Adverse Eventsを用いて、有害事象及び重篤な有害事象の重症度を評価しました。グレード2~5は以下のとおりです1。
グレード2:中等度
グレード3:高度
グレード4:生命を脅かす可能性のある事象
グレード5:有害事象に関連するすべての死亡はグレード5に分類
ACTT-2試験において収集された有害事象
COVID-19の症状及び重症度を考慮し、有害事象についてはグレード3又は4の事象を収集しました。また、治験薬との関連があると判断されたグレード2以上の薬剤関連過敏症反応、グレードを問わない静脈血栓塞栓症関連事象を収集しました1。
また、治験薬との関連を、以下の 2 段階で判断しました。
関連あり
関連なし
ACTT-2試験における有害事象の概要
ACTT-2試験における各群の有害事象の概要を表1に示します。
表 1. ACTT-2試験のAs-Treated集団における有害事象1
|
PBO
+ RDV |
BARI
+ RDV |
グレード3又は4の有害事象 |
238 (47) |
207 (41) |
死亡に至った有害事象 |
31 (6) |
19 (4) |
重篤な有害事象 |
103 (20) |
77 (15) |
投与中止に至った有害事象 |
59 (12) |
34 (7) |
静脈血栓塞栓症 肺塞栓症 |
16 (3) 2 (0.4) |
21 (4) 5 (1) |
n(%)
同一患者に同一有害事象が複数回発現した場合は1例として集計。
死亡に至った有害事象
各群における死亡に至った有害事象を表2に示します。ACTT-2試験において治験薬との関連ありと判断された死亡に至った有害事象はありませんでした1。
表 2. ACTT-2試験のAs-Treated集団における死亡に至った有害事象1
|
PBO
+ RDV |
BARI
+ RDV |
||
例数 |
% |
例数 |
% |
|
呼吸不全 |
7 |
1.4 |
5 |
1.0 |
急性呼吸不全 |
5 |
1.0 |
3 |
0.6 |
敗血症性ショック |
1 |
0.2 |
2 |
0.4 |
低酸素症 |
1 |
0.2 |
1 |
0.2 |
誤嚥性肺炎 |
0 |
0.0 |
1 |
0.2 |
呼吸停止 |
1 |
0.2 |
1 |
0.2 |
呼吸窮迫 |
1 |
0.2 |
1 |
0.2 |
心停止 |
2 |
0.4 |
1 |
0.2 |
心肺停止 |
1 |
0.2 |
1 |
0.2 |
無脈性電気活動 |
0 |
0.0 |
1 |
0.2 |
洞性頻脈 |
0 |
0.0 |
1 |
0.2 |
胃腸出血 |
0 |
0.0 |
1 |
0.2 |
急性呼吸窮迫症候群 |
4 |
0.8 |
0 |
0.0 |
多臓器機能不全症候群 |
3 |
0.6 |
0 |
0.0 |
肺塞栓症 |
1 |
0.2 |
0 |
0.0 |
左室不全 |
1 |
0.2 |
0 |
0.0 |
硬膜下血腫 |
1 |
0.2 |
0 |
0.0 |
脳症 |
1 |
0.2 |
0 |
0.0 |
ショック |
1 |
0.2 |
0 |
0.0 |
投与中止に至った有害事象
治験薬の投与中止に至った有害事象を発現した患者の割合は、BARI+RDV 群6.7%及び PBO+RDV 群11.6%でした1。治験薬の投与中止に至った有害事象を表3に示します。
表3. ACTT-2試験のAs-Treated集団におけるいずれかの投与群で2 例以上に発現した投与中止に至った有害事象1
|
PBO
+ RDV |
BARI
+ RDV |
||
例数 |
% |
例数 |
% |
|
急性腎障害 |
18 |
3.5 |
7 |
1.4 |
深部静脈血栓症 |
6 |
1.2 |
6 |
1.2 |
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加 |
2 |
0.4 |
3 |
0.6 |
トランスアミナーゼ上昇 |
3 |
0.6 |
2 |
0.4 |
呼吸不全 |
3 |
0.6 |
2 |
0.4 |
アラニンアミノトランスフェラーゼ増加 |
2 |
0.4 |
2 |
0.4 |
敗血症性ショック |
2 |
0.4 |
2 |
0.4 |
肺塞栓症 |
0 |
0.0 |
2 |
0.4 |
糸球体濾過率減少 |
3 |
0.6 |
1 |
0.2 |
肺炎 |
2 |
0.4 |
1 |
0.2 |
腎不全 |
3 |
0.6 |
0 |
0.0 |
重篤な有害事象
各群における主な重篤な有害事象を表4に示します。
なお、重篤な事象とは以下と定義しました1。
・ 死亡
・ 生命を脅かすもの
・ 入院又は入院の延長
・ 永続的又は顕著な障害・機能不全に陥るもの
・ 先天異常・先天性欠損を来すもの
表 4. ACTT-2試験のAs-Treated集団におけるいずれかの投与群で5例以上に発現した
重篤な有害事象1
|
PBO
+ RDV |
BARI
+ RDV |
||
例数 |
% |
例数 |
% |
|
呼吸不全 |
37 |
7.3 |
24 |
4.7 |
急性呼吸不全 |
9 |
1.8 |
16 |
3.2 |
急性腎障害 |
11 |
2.2 |
5 |
1.0 |
低血圧 |
5 |
1.0 |
5 |
1.0 |
肺塞栓症 |
1 |
0.2 |
5 |
1.0 |
急性呼吸窮迫症候群 |
9 |
1.8 |
4 |
0.8 |
敗血症性ショック |
8 |
1.6 |
4 |
0.8 |
呼吸窮迫 |
6 |
1.2 |
4 |
0.8 |
肺炎 |
8 |
1.6 |
2 |
0.4 |
多臓器機能不全症候群 |
6 |
1.2 |
1 |
0.2 |
腎不全 |
5 |
1.0 |
0 |
0.0 |
治験薬と関連のある有害事象(副作用)
治験担当医師により治験薬と関連があると判断された重篤又は非重篤の有害事象を発現した患者の割合は、BARI+RDV 群5.1%及び PBO+RDV 群6.1%でした2。治験薬と関連があると判断された重篤又は非重篤の有害事象を表5に示します。
表 5. ACTT-2試験のAs-Treated集団における治験薬と関連のある重篤又は非重篤の有害事象3,4
|
PBO
+ RDV |
BARI
+ RDV |
|||
例数 |
% |
例数 |
% |
||
臨床検査 |
16 |
3.1 |
18 |
3.6 |
|
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加 |
3 |
0.6 |
7 |
1.4 |
|
リンパ球数減少 |
5 |
1.0 |
6 |
1.2 |
|
アラニンアミノトランスフェラーゼ増加 |
3 |
0.6 |
4 |
0.8 |
|
トランスアミナーゼ上昇 |
4 |
0.8 |
2 |
0.4 |
|
抱合ビリルビン増加 |
0 |
0.0 |
1 |
0.2 |
|
肝機能検査値上昇 |
0 |
0.0 |
1 |
0.2 |
|
血小板数減少 |
0 |
0.0 |
1 |
0.2 |
|
プロトロンビン時間延長 |
1 |
0.2 |
1 |
0.2 |
|
糸球体濾過率減少 |
2 |
0.4 |
0 |
0.0 |
|
呼吸器、胸郭および縦隔障害 |
0 |
0.0 |
4 |
0.8 |
|
肺塞栓症 |
0 |
0.0 |
4 |
0.8 |
|
胃腸障害 |
2 |
0.4 |
2 |
0.4 |
|
悪心 |
1 |
0.2 |
2 |
0.4 |
|
嘔吐 |
2 |
0.4 |
0 |
0.0 |
|
一般・全身障害および投与部位の状態 |
1 |
0.2 |
1 |
0.2 |
|
発熱 |
0 |
0.0 |
1 |
0.2 |
|
末梢性浮腫 |
1 |
0.2 |
0 |
0.0 |
|
感染症および寄生虫症 |
2 |
0.4 |
1 |
0.2 |
|
椎間板炎 |
0 |
0.0 |
1 |
0.2 |
|
肺膿瘍 |
1 |
0.2 |
0 |
0.0 |
|
肺炎 |
1 |
0.2 |
0 |
0.0 |
|
腎および尿路障害 |
1 |
0.2 |
1 |
0.2 |
|
急性腎障害 |
1 |
0.2 |
1 |
0.2 |
|
血管障害 |
10 |
2.0 |
1 |
0.2 |
|
深部静脈血栓症 |
6 |
1.2 |
1 |
0.2 |
|
腋窩静脈血栓症 |
1 |
0.2 |
0 |
0.0 |
|
腕頭静脈血栓症 |
1 |
0.2 |
0 |
0.0 |
|
末梢性虚血 |
1 |
0.2 |
0 |
0.0 |
|
血栓症 |
1 |
0.2 |
0 |
0.0 |
|
血液およびリンパ系障害 |
2 |
0.4 |
0 |
0.0 |
|
リンパ球減少症 |
1 |
0.2 |
0 |
0.0 |
|
好中球減少症 |
1 |
0.2 |
0 |
0.0 |
|
肝胆道系障害 |
1 |
0.2 |
0 |
0.0 |
|
肝炎 |
1 |
0.2 |
0 |
0.0 |
|
免疫系障害 |
1 |
0.2 |
0 |
0.0 |
|
過敏症 |
1 |
0.2 |
0 |
0.0 |
|
皮膚および皮下組織障害 |
1 |
0.2 |
0 |
0.0 |
|
発疹 |
1 |
0.2 |
0 |
0.0 |
[引用元]
オルミエント 申請資料概要(ACTT-2試験)(承認時評価資料)
Kalil, A.C. et al. Baricitinib plus Remdesivir for Hospitalized Adults with Covid-19. N Engl J Med. 2021; 384(9):795-807.[利益相反:本試験はバリシチニブの提供に関してイーライリリー社の支援を受けました。本論文の著者のうち2名はイーライリリー社の社員です。著者にイーライリリー社より研究費の助成、コンサルタント料等を受領している者が含まれます。]
社内資料(ACTT-2試験)(承認時評価資料)
[略語]
ACTT-2 = Adaptive COVID-19 Treatment Trial 2
BARI = バリシチニブ
COVID-19 = SARS-CoV-2による感染症
PBO = プラセボ
RDV = レムデシビル
SARS-CoV-2 = 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2
[添付資料]
表 6. ACTT-2試験の概要a,1,2
ACTT-2 多施設共同第III相試験 (NCT04401579)1 |
|
実施医療機関 |
78施設(日本、米国ほか) |
デザイン |
無作為化、二重盲検、プラセボ対照、アダプティブデザイン |
目的 |
SARS-CoV-2による感染症(COVID-19)と診断された成人の入院患者を対象にバリシチニブ+レムデシビル群の有効性及び安全性をプラセボ+レムデシビル群と比較検討する。 |
対象 |
18歳以上のSARS-CoV-2による肺炎患者1033例 |
方法 |
18歳以上のSARS-CoV-2による肺炎患者1033例を1:1の割合で以下の並行投与群に無作為割付 バリシチニブ経口投与+レムデシビル静脈内投与(N=515) プラセボ経口投与+レムデシビル静脈内投与(N=518) レムデシビルは、投与初日に200mgを、翌日以降は10日目まで又は退院まで100mgを1日1回静脈内投与。バリシチニブは、入院期間中に4 mg(2 mg錠を2錠)を14日間又は退院まで1日1回経口投与した(又は必要に応じて粉砕し、懸濁して経鼻胃管チューブから投与)。 |
主な選択基準 |
|
主要評価項目 |
無作為化後28日時点での回復までの期間。回復は、患者がNIAID順序尺度において以下の3つのカテゴリーのいずれかを達成した最初の日と定義する: 入院しておらず活動も制限されない(OS-1) 入院していないが活動が制限される及び/又は在宅での酸素補充が必要(OS-2) 入院しているが酸素補充は不要-治療の継続を必要としない(OS-3) |
副次評価項目 |
無作為化後14日時点での8段階の順序尺度に基づく臨床状態 無作為化後14日時点及び28日時点での全死亡率 安全性、等 |
解析計画 |
有効性評価項目の解析をITT集団(無作為化されたすべての患者)及びAs-Treated集団(無作為化されたすべての患者のうち、バリシチニブ又はプラセボを投与された患者)を用いて実施し、ITT集団を用いた解析を主要な解析とした。 <主要SAP>
主要評価項目である回復までの期間について、バリシチニブ+レムデシビル群のプラセボ+レムデシビル群に対する優越性を検証した。ベースラインの疾患の重症度(中等症又は重症)*を層とした層別log-rank検定を実施した。患者が無作為化後28日以前に回復せずに死亡した場合は、回復までの期間の解析では28日で打ち切りとした。
*無作為化時に層別化に使用した重症度を解析に用いた。 |
略語:CT = コンピュータ断層撮影、SARS-CoV-2 = 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2、ECMO = 体外式膜型人工肺、PCR = ポリメラーゼ連鎖反応、SpO2 = 経皮的動脈血酸素飽和度、SAP = 統計解析計画書
a Other study details including exclusion criteria and secondary outcomes are available at www.ClinicalTrials.gov.
バリシチニブの効能又は効果(抜粋)
○SARS-CoV-2による肺炎(ただし、酸素吸入を要する患者に限る)
バリシチニブの効能又は効果に関連する注意(抜粋)
〈SARS-CoV-2による肺炎〉
5.5 酸素吸入、人工呼吸管理又は体外式膜型人工肺(ECMO)導入を要する患者を対象に入院下で投与を行うこと。[17.1.9参照]
バリシチニブの用法及び用量(抜粋)
〈SARS-CoV-2による肺炎〉
通常、成人にはレムデシビルとの併用においてバリシチニブとして4mgを1日1回経口投与する。なお、総投与期間は14日間までとする。
バリシチニブの用法及び用量に関連する注意(抜粋)
〈SARS-CoV-2による肺炎〉
7.8 中等度の腎機能障害のある患者には、2mgを1日1回経口投与する。重度の腎機能障害(15≦eGFR<30mL/分/1.73m2)がある患者に対して治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合には、下表を参考に投与することができる。[2.9、9.2.2-9.2.5、16.6.1参照]
腎機能障害の程度 |
推算糸球体ろ過量 |
投与量 |
正常又は軽度 |
eGFR≧60 |
4mgを1日1回投与 |
中等度 |
30≦eGFR<60 |
2mgを1日1回投与 |
重度 |
15≦eGFR<30 |
2mgを48時間ごとに 1回投与(投与回数は最大7回) |
eGFR<15 |
投与しない |
レムデシビルの効能又は効果
SARS-CoV-2による感染症
レムデシビルの効能又は効果に関連する注意
臨床試験等における主な投与経験を踏まえ、SARS-CoV-2による肺炎を有する患者を対象に投与を行うこと。[17.1.1 参照]
レムデシビルの用法及び用量
通常、成人及び体重40kg以上の小児にはレムデシビルとして、投与初日に200mgを、投与2日目以降は100mgを1日1回点滴静注する。
通常、体重3.5kg以上40kg未満の小児にはレムデシビルとして、投与初日に5mg/kgを、投与2日目以降は2.5mg/kgを1日1回点滴静注する。
なお、総投与期間は10日までとする。
レムデシビルの用法及び用量に関連する注意(抜粋)
7.2 目安として、5日目まで投与し、症状の改善が認められない場合には10日目まで投与する。
最終更新日: January 2022
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