ケサンラ ® (ドナネマブ(遺伝子組換え))
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ケサンラ(ドナネマブ)治療中の抗薬物抗体(ADA)の出現割合は?有効性及び安全性に影響するか?
臨床試験において、本剤を投与された88%の患者で抗薬物抗体(ADA)が認められ、その全例で中和抗体が認められた。ADA陽性例ではADA陰性例と比較して血清中ドナネマブ濃度が低下する傾向が認められたが、ADAの発現による本剤の有効性への明らかな影響は認められなかった。Infusion reactionを認めたほぼすべての患者でADA陽性であった。
[解説]
《抗薬物抗体(ADA)の出現割合》
海外第Ⅱ相試験TRAILBLAZER-ALZ(AACG)試験、国際共同第Ⅲ相試験TRAILBLAZER-ALZ 2(AACI)試験の併合解析の結果、免疫原性解析対象集団※において、ドナネマブを投与された88%の患者で抗薬物抗体(ADA)が認められ、また、その全例で中和抗体が認められました1)。
※ ベースライン後、治療期間中の治験薬投与下のADAが評価可能であったドナネマブ群の患者。
《有効性への影響》
ADA陽性例ではADA陰性例と比較して血清中ドナネマブ濃度が低下する傾向が認められましたが、ADAの発現によるドナネマブの有効性への明らかな影響は認められませんでした1)。
認知機能及び日常生活機能の指標であるiADRS及びCDR-SBに対するドナネマブの効果を評価するために構築された疾患進行モデルを用いた解析において、疾患進行速度に対する因子としてADAの抗体価を評価したところ、いずれの疾患進行モデルでも、ADAの抗体価は疾患進行速度の有意な共変量ではありませんでした2)。
iADRS及びCDR-SBに対するADAの抗体価の影響を評価する反復測定モデルにおいて、ADAの存在とドナネマブの臨床効果との関連は認められませんでした2)。
これらの結果から、ADAの抗体価及びADAの存在はドナネマブの臨床効果に影響がないことが示されました2)。この結果は、AACG試験、AACI試験(二重盲検投与期間)の併合解析(Dona-PC)データをADAの最大抗体価により3つのグループに分け、アミロイドβプラーク減少に対するADAの抗体価の影響を評価した反復測定モデルにおいて、ADAの抗体価に関係なく、プラセボ群と比較してアミロイドβプラークの減少が認められたことと一貫していました2)。
《安全性への影響》
Infusion reactionを認めたほぼすべて(99.5%)の患者がADA陽性であり、その約半数(44~56%)の最大抗体価は高抗体価グループ(>1:20480)に分類されました(全体の12~14%に相当)3)。また、高抗体価グループでは、infusion reactionを認めた割合が高かったものの、その大半(約67%)の患者においてはinfusion reactionの報告はありませんでした3)。
即時型の過敏症事象を発現した患者において、抗体価グループとその事象が重篤又は重度であった患者の割合との間に明確な関係は認められませんでした3)。また、アナフィラキシー事象を発現した患者において、ADAの抗体価とアナフィラキシー反応との明らかな関連は認められませんでした3)。
アミロイド関連画像異常-浮腫/滲出液貯留(ARIA-E)のリスクに対する免疫原性の統計学的に有意な影響も認められませんでした3)。
【AACG:TRAILBLAZER-ALZ試験の概要】4,5)
試験デザイン |
第Ⅱ相、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験 |
対象 |
PET検査により脳内にアミロイドβプラーク沈着及び軽度から中等度のタウ蓄積が認められたアルツハイマー病による軽度認知障害又は軽度認知症患者272例 |
方法 |
対象をドナネマブ群又はプラセボ群のいずれかに1:1の比で無作為に割り付けた。ドナネマブ群では、最初の3回はドナネマブ700mgを4週ごとに静脈内投与し、以降はドナネマブ1400mgを4週ごとに静脈内投与した。投与24及び52週時にflorbetapir(18F)を用いたPET検査を実施し、アミロイドβプラーク(センチロイド法)の除去に応じてドナネマブの用量を1400mgから700mg又はプラセボに減量することとした。最長72週間の二重盲検投与後(最終評価時点は投与76週時)、48週間の追跡調査期間を設けた。 |
安全性 |
本試験における有害事象発現割合はドナネマブ群で90.8%(119/131例)、プラセボ群で90.4%(113/125例)であった。 |
【AACI:TRAILBLAZER-ALZ 2試験の概要】1,6,7)
試験デザイン |
第Ⅲ相、多施設共同、無作為化、並行群間、二重盲検、プラセボ対照試験 |
対象 |
PET検査により脳内にアミロイドβプラーク沈着及びタウ蓄積が認められた早期アルツハイマー病患者(アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症) ・無作為化例数(タウ蓄積が軽度から中等度及び高度の全体集団):1736例(ドナネマブ群860例、プラセボ群876例)[うち日本人88例(ドナネマブ群45例、プラセボ群43例)] (タウ蓄積が軽度から中等度の集団):1182例(ドナネマブ群588例、プラセボ群594例)[うち日本人76例(ドナネマブ群40例、プラセボ群36例)] |
方法 |
対象をプラセボ群又はドナネマブ群のいずれかに1:1の比で無作為に割り付けた。割り付けの層別因子には、実施医療機関及びタウ蓄積(軽度~中等度、高度)を用いた。ドナネマブ群では、最初の3回はドナネマブ700mgを、4回目以降はドナネマブ1400mgを4週間ごとに最長72週間静脈内投与した。投与24、52、76、102、130週時のアミロイドPET検査により測定したアミロイドβプラークの除去がプラセボ切り替え基準※に該当した患者は、ドナネマブからプラセボへ二重盲検下で変更した。 ※ アミロイドPET検査により測定したアミロイドβプラーク蓄積が、いずれか1回の測定で11センチロイド未満、又は連続する2回の測定で11以上25センチロイド未満と定義した。 |
安全性 |
本試験における有害事象発現割合はドナネマブ群で89.0%(759/853例)、プラセボ群で82.2%(718/874例)であった。 |
[引用元]
ケサンラ電子添文
ケサンラ申請資料概要(CTD:2.7.2.4.4)(承認時評価資料)
ケサンラ申請資料概要(CTD:2.7.2.4.5)(承認時評価資料)
ケサンラ申請資料概要(CTD:2.7.6.4、付録表 2.7.6.4-2)(承認時評価資料)
Mintun MA, et al.: N Engl J Med. 2021; 384: 1691-1704(CNS 31697)
ケサンラ申請資料概要(CTD:2.7.6.5、付録表 2.7.6.5-1)(承認時評価資料)
Sims JR, et al.: JAMA. 2023; 330: 512-527(CNS 31698)
[略語]
ADA=抗薬物抗体
ARIA-E=アミロイド関連画像異常-浮腫/滲出液貯留
CDR-SB=認知症の重症度の評価ツール(領域スコア)
Dona-PC=AACI 試験のプラセボ対照、二重盲検投与期間及びAACG 試験(ドナネマブ群はドナネマブ単独投与群のみを含めた)を統合した解析データセット
iADRS=ADCS-iADL(手段的日常生活機能)及びADAS-Cog13(認知機能)から構成され、アルツハイマー病の連続性を有する変化の観点から総合的な疾患の重症度を測定する評価尺度
PET=陽電子放出断層撮影法
最終更新日: August 2024
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