ケサンラ ® (ドナネマブ(遺伝子組換え))
以下は適正使用情報として、本邦における承認事項(用法・用量、適応、剤形など)以外の情報が含まれる場合がございます。薬剤の使用に際しては、製品情報ページにある最新の電子化された添付文書をご確認ください。
ケサンラ(ドナネマブ)はどのような患者が適応となるか?投与の際に必要な検査は?
ドナネマブの国内で承認された効能又は効果は、「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」です。ドナネマブは、電子添文および最適使用推進ガイドラインをご確認の上、承認を受けた診断方法、例えばアミロイドPET、CSF検査、又は同等の診断法によりアミロイドβ病理を示唆する所見が確認され、アルツハイマー病と診断された患者のみに投与してください。また、投与によりARIAがあらわれることがあるため、投与開始前にMRI検査を実施し、その所見に基づき投与を開始してください。
[解説]
アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)及び軽度の認知症患者1)
《患者の選択に際して》
承認を受けた診断方法、例えばアミロイドPETや脳脊髄液(CSF)検査、又は同等の診断法を実施し、アミロイドβ病理を示唆する所見の有無を確認してください1)。
《投与できない患者》1)
無症候でアミロイドβ病理を示唆する所見のみが確認できた者
中等度以降のアルツハイマー病による認知症患者
本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者
本剤投与開始前に血管原性脳浮腫、5個以上の脳微小出血、脳表ヘモジデリン沈着症又は1cmを超える脳出血が確認された患者
ドナネマブの投与により、MRI上の異常所見であるアミロイド関連画像異常(ARIA)があらわれることがあります。ドナネマブの投与開始前に最新(1年以内)のMRI画像により、ARIAを含む異常所見の有無を確認してください1)。
また、最適使用推進ガイドラインの「投与対象となる患者」では電子添文の内容に加えて、以下が記載されています2)。
患者本人及び家族・介護者の、安全性に関する内容も踏まえ本剤による治療意思が確認されていること。
MRI検査(1.5 Tesla以上)が実施可能であること。(例:金属を含む医療機器(MR装置に対する適合性が確認された製品を除く)を植込み又は留置した患者は不可)
認知機能の低下及び臨床症状の重症度範囲が以下の(a)及び(b)の両方を満たすことが、投与開始前1か月以内の期間を目安に確認されていること。
(a)認知機能評価 MMSEスコア20点以上、28点以下
(b)臨床認知症尺度CDR全般スコア0.5又は1
独居者の場合は、患者の周囲の者、地域包括支援センター、医療ソーシャルワーカー等の協力を得て、独居者の日常生活の様子を聴取することにより客観的な評価を行い、CDR全般スコアを評価すること。
ただし、患者の周囲の者、地域包括支援センター、医療ソーシャルワーカー等からの情報が得られない等、CDR全般スコア評価が困難な場合は、他の評価方法により、認知症の重症度の範囲が同等であることを確認した上で用いること。
なお、タウ蓄積に関しては、添付文書の効能又は効果に関連する注意において、本剤の投与に先立ち、Aβ病理に関する検査結果、ADの病期、flortaucipir(18F)を用いたPET検査を実施した場合はその結果等を考慮した上で、本剤投与の可否を判断することと記載されているが、現時点におけるタウPET検査の医療実態等を踏まえ、当面の間はタウ蓄積の検査を求めないこととする。
ドナネマブ投与に際しては電子添文及び最適使用推進ガイドラインをご確認ください1,2)。
<診断に必要な検査>
アミロイドPET検査について、『アミロイドPETイメージング剤の適正使用ガイドライン(改訂第3版)』では、以下のように記載されています3)。
アミロイドPET検査は、認知症やアルツハイマー病に関する十分な知識と経験をもつ専門医師が、患者を診察した上で、適用を判断して依頼する必要がある。そのために、検査は認知症に関して高度の専門性を有する医師によって依頼されることが望ましい。このため、アミロイドPET検査の依頼を行う医師は一定の研修を修了する必要がある。
アミロイドPET検査の際は、アミロイドPET検査に用いる診断薬の電子添文をご確認の上、詳細は製造販売元にお問い合わせください。
《CSF検査》
CSF検査について、『認知症に関する脳脊髄液・血液バイオマーカー、APOE検査の適正使用指針(第2版)』では、以下のように記載されています4)。
脳脊髄液・血液バイオマーカー検査は、認知症に関する十分な知識と経験をもつ専門医師が患者を診察し、認知機能状態を把握した上で、検査の目的と有用性を判断して依頼する。そのため、バイオマーカー検査に関しては認知症の関連学会の専門医等の医師によって依頼されるべきである。
アルツハイマー病によるMCIまたは軽度の認知症が臨床的に疑われ、抗アミロイドβ抗体薬の対象となるか否かの判断のためにアミロイドβ検査を実施することは適切である。脳脊髄液検査においては、アミロイドβ42/40により脳内アミロイド蓄積の有無を判定する。これらの検査を保険診療として実施する際には、治療薬および検査薬の添付文書ならびに最適使用推進ガイドラインを参照し、適切に実施する。
CSF検査の際は、CSF検査に用いる体外診断用医薬品の電子添文をご確認の上、詳細は製造販売元にお問い合わせください。
【ドナネマブの効能又は効果】1)
アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制
【ドナネマブの効能又は効果に関連する注意】1)
5.1 本剤は、疾患の進行を完全に停止、又は疾患を治癒させるものではない。
5.2 承認を受けた診断方法、例えばアミロイドPET、脳脊髄液(CSF)検査、又は同等の診断法によりアミロイドβ病理を示唆する所見が確認され、アルツハイマー病と診断された患者のみに本剤を使用すること。
5.3 無症候でアミロイドβ病理を示唆する所見のみが確認できた者、及び中等度以降のアルツハイマー病による認知症患者に本剤を投与開始しないこと。
5.4 「17. 臨床成績」の項の内容を熟知し、国際共同第Ⅲ相試験で用いられた診断基準、組み入れられた患者の臨床症状スコアの範囲、試験結果等を十分に理解した上で本剤投与の適否を判断すること。
5.5 Flortaucipir(18F)を用いたPET検査の結果から軽度以上のタウ蓄積が認められると判断できない患者に対する有効性及び安全性は確立していない。本剤の投与に先立ち、アミロイドβ病理に関する検査結果、アルツハイマー病の病期、flortaucipir(18F)を用いたPET検査を実施した場合はその結果等を考慮した上で、本剤投与の可否を判断すること。
[引用元]
最適使用推進ガイドライン ドナネマブ(遺伝子組換え)
「アミロイドPETイメージング剤の適正使用ガイドライン」ワーキンググループ編集, 日本核医学会, 他監修:アミロイドPETイメージング剤の適正使用ガイドライン(改訂第3版). 2023年9月21日
「認知症に関する脳脊髄液・血液バイオマーカー、APOE検査の適正使用指針」作成委員会, 日本認知症学会, 他監修:認知症に関する脳脊髄液・血液バイオマーカー、APOE検査の適正使用指針(第2版). 2023年9月30日
[略語]
AD=アルツハイマー病
APOE=アポリポ蛋白E
ARIA=アミロイド関連画像異常
Aβ(amyloid-beta)=アミロイドβ
CDR=認知症の重症度の評価ツール
CSF=脳脊髄液
MCI=軽度認知障害
MMSE=ミニメンタルステート検査
MRI=核磁気共鳴画像
PET=陽電子放出断層撮影法
最終更新日: November 2024
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