ケサンラ ® (ドナネマブ(遺伝子組換え))
以下は適正使用情報として、本邦における承認事項(用法・用量、適応、剤形など)以外の情報が含まれる場合がございます。薬剤の使用に際しては、製品情報ページにある最新の電子化された添付文書をご確認ください。
ケサンラ(ドナネマブ)の投与によって起こるアミロイド関連画像異常(amyloid-related imaging abnormalities:ARIA)とは?具体的な症状は?
ARIA は、抗アミロイドβ抗体に共通する画像異常の総称です。脳実質における血管原性浮腫や脳溝への滲出液貯留が認められるARIA-E と、脳微小出血や脳表ヘモジデリン沈着が認められるARIA-Hに分類されます。ARIAの多くは 無症候性ですが、症候性ARIA の主な症状としては、頭痛、錯乱、悪心、嘔吐、ふらつき、めまい、振戦、視覚障害、言語障害、認知機能の悪化、意識変容、発作等があります。
[解説]
ドナネマブ投与により、MRI画像の異常所見であるアミロイド関連画像異常(ARIA)があらわれることがあります。ARIAの種類とその特徴、症状、重症度分類は、以下の通りです。
《ARIA(アミロイド関連画像異常)とは》1)
ARIAは、抗アミロイドβ抗体に共通する画像異常の総称です2,3)。
発現機序として、血管透過性の亢進により、蛋白液や血球成分が血管外に滲出するという病態生理学的メカニズムが考えられています4,5)。アルツハイマー病の自然経過に伴い脳アミロイド血管症が起こりますが、類似した発症機序、病態であるARIAが抗アミロイドβ抗体の投与によって起こることが報告されています6-9)。
《ARIAの種類》
ARIAは、脳実質における血管原性浮腫や脳溝への滲出液貯留が認められるアミロイド関連画像異常‐浮腫/滲出液貯留(ARIA-E)と、脳微小出血や脳表ヘモジデリン沈着が認められるアミロイド関連画像異常‐脳微小出血・脳表ヘモジデリン沈着症(ARIA-H)に分類されます(表1)1)。ARIA-EとARIA-Hは、単独で発現する場合と同時に発現する場合がありますが、ARIA-Hでは蛋白液も滲出しているものと考えられることから、ARIA-Eの併発が予想されます5)。
表1)ARIA-E及びARIA-Hの特徴1)
|
ARIA-E |
ARIA-H |
特徴 |
脳実質における血管原性浮腫と脳溝における滲出液貯留があり、両者を同時に認める場合がある。 後頭葉でみられることが最も多く、小脳・脳幹は少ない2,5,6)。 多くは片側性であるが、両側性の場合もある2,4,6)。 滲出物は蛋白液である5)。 |
脳実質における微小出血※や脳表ヘモジデリン沈着を画像所見とする4)。 滲出物は血球成分である7)。 |
MRI検査 |
2D-又は3D-FLAIRで検出5) |
T2*GRE(あるいはSWI)で検出5) |
画像上の重症度 |
FLAIR高信号域の大きさと数(血管原性浮腫と滲出液貯留の合算)で分類される5)。 |
脳微小出血※の累積個数と脳表ヘモジデリン沈着の累積数で分類される5)。 |
※ ドナネマブでは10mmを超える脳出血はARIA-Hとは別に評価した。
FLAIR:fluid attenuated inversion recovery、GRE:gradient-echo(グラディエントエコー)、SWI:susceptibility-weighted image(磁化率強調画像)
《ARIAの症状》
ARIAの多くは無症候性ですが、症候性ARIAの主な症状としては、頭痛、錯乱、悪心、嘔吐、ふらつき、めまい、振戦、視覚障害、言語障害、認知機能の悪化、意識変容、発作等があります1,8,9)。
《ARIAの重症度分類》
ARIA-E及びARIA-Hの重症度は、それぞれMRI所見に基づき軽度~重度で分類されます。電子添文におけるARIAの重症度分類に関する「7. 用法及び用量に関連する注意【参考】(抜粋)」は、以下の通りです9)。
【ドナネマブの用法及び用量に関連する注意(抜粋)】
7. 用法及び用量に関連する注意
【参考】
〈ARIAの重症度分類:MRI画像による分類〉
ARIA-E
重症度 |
MRI所見 |
軽度 |
脳溝、皮質、又は皮質下白質の1ヵ所に限局した、5cm未満のFluid Attenuated Inversion Recovery(FLAIR)高信号 |
中等度 |
最大径が5~10cmのFLAIR高信号が1ヵ所にみられる、又は10cm未満の高信号が複数部位にみられる。 |
重度 |
10cmを超えるFLAIR高信号で、脳回腫脹及び脳溝消失を伴う。1ヵ所又は複数ヵ所に独立した病変を認める。 |
ARIA-H
重症度 |
MRI所見 |
|
脳微小出血 |
脳表ヘモジデリン沈着症 |
|
軽度 |
新規が1~4個 |
1ヵ所 |
中等度 |
新規が5~9個 |
2ヵ所 |
重度 |
新規が10個以上 |
3ヵ所以上 |
ケサンラ適正使用ガイド
Sperling RA, et al.: Alzheimers Dement. 2011; 7: 367-385(CNS31741)
Withington CG, Turner RS: Front Neurol. 2022; 13: 862369(CNS31771)
Barakos J, et al.: AJNR Am J Neuroradiol. 2013; 34: 1958-1965(CNS31743)
Cogswell PM, et al.: AJNR Am J Neuroradiol. 2022; 43: E19-E35(CNS31744)
Filippi M, et al.: JAMA Neurol. 2022; 79: 291-304(CNS31749)
Agarwal A, et al.: Radiographics. 2023; 43: e230009(CNS31750)
Hampel H, et al.: Brain. 2023; 146: 4414-4424(CNS31751)
ケサンラ電子添文
[略語]
ARIA=アミロイド関連画像異常
ARIA-E=アミロイド関連画像異常‐浮腫/滲出液貯留
ARIA-H=アミロイド関連画像異常‐脳微小出血・脳表ヘモジデリン沈着症
FLAIR=fluid attenuated inversion recovery
GRE=グラディエントエコー
MRI=核磁気共鳴画像
SWI=磁化率強調画像
最終更新日: August 2024
お探しの情報が見つからない場合は、こちら よりお問い合わせください。