ケサンラ ® (ドナネマブ(遺伝子組換え))
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ケサンラ(ドナネマブ)の臨床試験における「ARIA」の発現機序、発現状況(発現頻度、症状、発現時期、消失/安定化までの期間)は?
ARIAの発現機序は血管透過性の亢進により、蛋白液や血球成分が血管外に滲出すると考えられており、抗アミロイドβ抗体製剤 投与によるARIAのリスクの増大が報告されています。ドナネマブの臨床試験におけるARIAの発現割合はARIA-Eが24.0%、ARIA-Hが31.4%でした。ARIAの主な随伴症状は頭痛などでした。ARIA-E関連事象の多くは治療開始24週以内に発現し、多くの重篤なARIA-E関連事象は治療開始12 週以内に発現しました。なおARIA-E関連事象の消失までの期間の中央値は約9週間でした。
[解説]
《発現機序》
アミロイド関連画像異常(ARIA)の発現機序として、血管透過性の亢進により、蛋白液や血球成分が血管外に滲出するという病態生理学的メカニズムが考えられています1,2)。アルツハイマー病の自然経過に伴い脳アミロイド血管症が起こりますが、類似した発症機序、病態であるARIAが抗アミロイドβ抗体の投与によって起こることが報告されています3-6)。
《ARIA関連事象の発現状況》7)
国際共同第Ⅲ相試験TRAILBLAZER-ALZ 2(AACI)試験では、アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の患者1727例(日本人88例)が治験薬を投与されました(安全性解析対象集団※1)。二重盲検投与期間に、本剤群で認められた有害事象※2の発現割合は、ARIA関連事象36.8%(314/853例)であり、ARIA-E関連事象※3 24.0%(205/853例)、ARIA-H関連事象※4 31.4%(268/853例)でした(表1)。
表1)ARIA関連有害事象※2の要約(安全性解析対象集団※1)7)
※1 無作為化後、治験薬を1回以上投与したすべての患者。
※2 本試験における有害事象とは、治験薬の初回投与日から、二重盲検投与期間終了後57日又は継続投与期間での治験薬の初回投与前日のいずれか早い方までに発現した、治験薬の投与開始後に新たに発現又は重症度が悪化した有害事象を指す。
※3 MRI画像所見又は治験担当医師の報告に基づくARIA-E(アミロイド関連画像異常-浮腫/滲出液貯留、脳浮腫、血管原性脳浮腫)
※4 MRI画像所見又は治験担当医師の報告に基づくARIA-H(アミロイド関連画像異常-微小出血及びヘモジデリン沈着、脳幹微小出血、小脳微小出血、脳ヘモジデリン沈着、脳微小出血、脳表ヘモジデリン沈着症)
※5 3段階評価を用いた画像所見に基づく。
※6 症例報告書に基づく。
※7 有害事象の報告に基づく。
《脳出血の要約》7)
ドナネマブの臨床試験では、10mmを超える脳出血をARIA-H関連事象とは別に評価し、本剤群で認められた脳出血の発現割合は0.4%(3/853例)でした(表2)。
表2)脳出血の要約(安全性解析対象集団※1)7)
※1 無作為化後、治験薬を1 回以上投与したすべての患者。
※2 MRI画像所見又は治験担当医師の報告に基づく脳出血(脳出血、出血性卒中)。10mm超の脳内出血を脳出血と定義した。
《症候性ARIA関連事象の発現状況》7)
AACI試験で、ARIA-E 関連事象※1又はARIA-H 関連事象※2を発現した本剤群314例、プラセボ群130例における症候性ARIA関連事象の発現割合は、表3の通りでした。
表3)症候性ARIA関連事象の発現状況(安全性解析対象集団※3)7)
※1 MRI画像所見又は治験担当医師の報告に基づくARIA-E(アミロイド関連画像異常-浮腫/滲出液貯留、脳浮腫、血管原性脳浮腫)
※2 MRI画像所見又は治験担当医師の報告に基づくARIA-H(アミロイド関連画像異常-微小出血及びヘモジデリン沈着、脳幹微小出血、小脳微小出血、脳ヘモジデリン沈着、脳微小出血、脳表ヘモジデリン沈着症)
※4 症候性ARIAの随伴症状は、ARIA-EとARIA-Hが併発した場合、ARIA-Hの症状をARIA-Eと区別することが困難であることから、症候性ARIA-Hの随伴症状は系統的に収集していなかった。症候性ARIAの随伴症状はARIA-EとARIA-Hに分類せず集計した。
※5 症候性ARIAの重症度及び随伴症状の発現割合の分母はARIA-E関連事象又はARIA-H関連事象を発現した患者数とした。
《ARIA-E関連事象の発現時期》7)
ARIA-E関連事象の多くは、治療開始24週以内に発現し、また多くの重篤なARIA-E関連事象は、治療開始12 週以内に発現しました。
図)ARIA-E関連事象※1を発現したドナネマブ群の患者205例における、
各投与回※2の全事象及び重篤な事象の初回発現割合(安全性解析対象集団)7)
※1 MRI画像所見又は治験担当医師の報告に基づくARIA-E(アミロイド関連画像異常-浮腫/滲出液貯留、脳浮腫、血管原性脳浮腫)
※2 投与回は、各投与回から次の投与回の前日までの期間を示す。
《ARIA-E関連事象の転帰と消失までの期間》7)
ドナネマブ群のARIA-E関連事象の消失までの中央値は約9 週間(59 日間)でした8)。
ARIA-E関連事象の発現割合とその転帰・消失時期は表4の通りです。
表4)ARIA-E関連事象の転帰と消失までの期間(安全性解析対象集団※1)7)
※1 無作為化後、治験薬を1回以上投与したすべての患者。
※2 MRI画像所見又は治験担当医師の報告に基づくARIA-E(アミロイド関連画像異常-浮腫/滲出液貯留、脳浮腫、血管原性脳浮腫)
※3 MRI画像に基づくすべての記録が「消失」、かつ治験担当医師の報告に基づくすべての記録が「回復又は消失」である場合、転帰を「消失」とした。それ以外の転帰を「非消失」とした。
※4 MRI画像に基づく。
※5 各投与期における初発のARIA-E関連事象の消失時期をMRI画像に基づくARIA-E関連事象の発現で判断しているため、治験担当医師の報告に基づくARIA-E関連事象のみを発現した場合は「欠測」とした。
※6 ARIA-E関連事象の発現割合の分母は解析対象集団の患者数とした。その他の分母はARIA-E関連事象を発現した患者数とした。
《重度のARIA-H関連事象の安定化》9)
海外第Ⅱ相試験 TRAILBLAZER-ALZ(AACG)試験及びAACI試験(二重盲検投与期間)における安全性解析対象集団を解析した結果、MRIに基づいた重度のARIA-H関連事象を発現したドナネマブ群の患者の78.4%(80/102例)は、画像所見上の安定化が確認されました(表5)。
表5)重度のARIA-H関連事象の安定化(Dona-PC、安全性解析対象集団※1)9)
※1 無作為化後、治験薬を1回以上投与したすべての患者。
※2 パーセンテージはMRI 検査に基づいた重度のARIA-H関連事象を発現した患者数を分母とした。
※3 ARIA-H関連事象の治療のために投与される薬剤と定義。
※4 ARIA-H関連事象の症状の重症度は、有害事象(MedDRA LLT)の報告又はAACN試験の症例報告書に基づく。
※5 パーセンテージは重度の微小出血を発現した患者数を分母とした。
※6 パーセンテージは重度の脳表ヘモジデリン沈着を発現した患者数を分母とした。
Barakos J, et al.: AJNR Am J Neuroradiol. 2013; 34: 1958-1965(CNS31743)
Cogswell PM, et al.: AJNR Am J Neuroradiol. 2022; 43: E19-E35(CNS31744)
Salloway S, et al.: JAMA Neurol. 2022; 79: 13-21(CNS31745)
Sperling R, et al.: Lancet Neurol. 2012; 11: 241-249(CNS31746)
Carlson C, et al.: Alzheimers Dement (Amst). 2016; 2: 75-85(CNS31747)
Ketter N, et al.: J Alzheimers Dis. 2017; 57: 557-573(CNS31748)
ケサンラ申請資料概要(CTD:2.7.4.5.9.1.5)
ケサンラ申請資料概要(CTD:2.7.4.5.9.1.3.2)
[略語]
ARIA=アミロイド関連画像異常
ARIA-E=アミロイド関連画像異常-浮腫/滲出液貯留
ARIA-H=アミロイド関連画像異常-脳微小出血・脳表ヘモジデリン沈着症
Dona-PC=AACI試験のプラセボ対照、二重盲検投与期間及びAACG試験(ドナネマブ群はドナネマブ単独投与群のみを含めた)を統合した解析データセット
MedDRA=医薬品規制調和国際会議(ICH)国際医薬用語集
MRI=核磁気共鳴画像
最終更新日: November 2024
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