トルツ ® (イキセキズマブ(遺伝子組換え))
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インターロイキン(IL)-17と発がんとの関連は?また、トルツ(イキセキズマブ)による発がんへの影響はあるか?
インターロイキン(IL)-17Aは血管新生誘導、炎症性サイトカイン・ケモカインの産生亢進、炎症性細胞の動員及び腫瘍細胞の生存促進作用を有することが示唆されています。一方、成人乾癬患者を対象としたイキセキズマブの 17の臨床試験を統合した安全性解析結果では、イキセキズマブ投与中の悪性腫瘍の発生率は以下のとおりでした。
[解説]
インターロイキン(IL)-17Aと腫瘍形成に関する文献の一部には、IL-17Aの抗腫瘍効果を示唆するものもある一方で、多くの公表文献ではIL-17Aは腫瘍形成を促進する方向に作用することが示されています。すなわち、種々の腫瘍において高レベルのIL-17Aが発現しており、IL-17Aの発現は転帰が悪いことと関連するとされ、IL-17Aは血管新生誘導、炎症性サイトカイン・ケモカインの産生亢進、炎症性細胞の動員及び腫瘍細胞の生存促進作用を有することが示唆されています1)~9)。
さらに、移植腫瘍細胞において、IL-17A遺伝子又はIL-17受容体遺伝子ノックダウン又はノックアウトあるいは抗IL-17A抗体を用いた研究の多くで腫瘍増殖が抑制されることが報告されています7) 10)~12)。
非臨床試験においてイキセキズマブのがん原性が検討されました。その検討は、イキセキズマブの毒性試験結果及び標的分子であるIL-17Aの生体内での機能・役割に関する公表文献に基づき評価されました。その結果、イキセキズマブががん原性を有する可能性は低いことが示唆されました2)。
一方、成人乾癬患者を対象としたイキセキズマブの17の臨床試験を統合した安全性解析結果では、計6892名の成人乾癬患者18,025.7人年を対象として安全性データが解析されました。悪性腫瘍は141人の患者に発生しました(発生率 0.8/100人年)。そのうち54人の患者(発生率 0.3/100人年)は非黒色腫皮膚癌(NMSC)であり、94人の患者(発生率 0.5/100人年)はNMSC以外の悪性腫瘍でした。NMSCの最も報告された症例は基底細胞癌(n = 44、発生率 0.2/100人年)であり、次いで皮膚の扁平上皮癌(n = 8、発生率 0.0/100人年)でした。NMSC以外の悪性腫瘍で最も報告されたタイプは前立腺癌(n = 12、発生率 0.1/100人年;男性特有のイベントのため分母調整)でした。NMSCの治療に関連する有害事象(TEAE)は主に軽度(22/54症例)から中等度(29/54症例)の重症度であり、NMSC以外の悪性腫瘍は大多数が中等度(24/94症例)から重度(58/94症例)のイベントでした。大多数の患者は非重篤なNMSCを報告しました。合計で5件の重篤なNMSC症例が報告されましたが、すべて回復し、非重篤な症例の94.4%も同様に回復しました。NMSC以外の悪性腫瘍の大多数は重篤な症例(76/94症例)であり、5件のイベントは致命的で、18件の症例は回復し、47件の症例は回復しておらず、1件の症例は後遺症を伴って回復し、7件の症例は回復中であり、データロック時点で4件の症例は転帰不明でした。悪性腫瘍の診断により、73人の患者(1.1%、発生率 0.4/100人年)が試験薬の中止に至りました。試験薬の開始から悪性腫瘍イベントの発生までの平均期間は670日でした(NMSC:536.9日、NMSC以外の悪性腫瘍:763.5日)。イキセキズマブ投与中の悪性腫瘍の発生率は5年間にわたり低く、一定でした13)。
イキセキズマブの有効性及び副作用を患者さんに十分に説明し、患者さんが理解したことを確認した上での治療開始をお願いいたします。
[引用元]
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Kryczek, I. et al.: J Immunol, 178(11): 6730-6733, 2007(AIM00317)
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Wang, L. et al.: J Exp Med, 206(7): 1457-1464, 2009(AIM00320)
Donggou, H. et al.: J Immunol, 184(5): 2281-2288, 2010(AIM00321)
トルツ(尋常性乾癬、乾癬性関節炎、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症)申請資料概要 CTD2.6.6.5 (承認時評価資料)
Griffiths, C. E. M. et al.: Dermatol Ther (Heidelb), 12(6): 1431-1446, 2022(AIM00864)
最終更新日: April 2025
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