オルミエント ® (バリシチニブ)
以下は適正使用情報として、本邦における承認事項(用法・用量、適応、剤形など)以外の情報が含まれる場合がございます。薬剤の使用に際しては、製品情報ページにある最新の電子化された添付文書をご確認ください。
<効能共通>オルミエント(バリシチニブ)の副作用「間質性肺炎」の発現状況、背景情報及び発現した場合の対処法は?
間質性肺炎の発現状況、背景情報及び発現した場合の対処法は以下の通りです。
[解説]
※本剤は、国内外の試験成績に基づいて承認されました。このため、一部国内の承認効能又は効果、用法及び用量と異なる成績が含まれています。
《発現状況》
<関節リウマチ>
間質性肺疾患は、関節リウマチ患者を対象とした長期継続試験を含む国内外臨床試験10試験の併合解析において、バリシチニブを投与された全体集団3770例中24例で発現が認められました1)。曝露期間あたりのIRは、0.2/100人年でした1)。
<アトピー性皮膚炎(成人)>
成人アトピー性皮膚炎患者を対象とした長期継続試験を含む国内外臨床試験8試験の併合解析【データカットオフ日:2021年11月3日(JAHN)、2021年12月15日(JAIN)、2021年12月21日(JAIX)】において、バリシチニブを投与された全体集団では間質性肺疾患及び肺線維症は認められませんでした2)。
<アトピー性皮膚炎(小児)>
小児アトピー性皮膚炎患者を対象とした長期投与期間を含む国内外臨床試験JAIP試験(52週データカットオフ時)【データカットオフ日は最後の被験者が投与52週に達した時点】において、バリシチニブが投与された全体集団の0.2%(1/467例)に発現し、曝露期間あたりのIRは0.1/100人年でした2)。
<円形脱毛症>
円形脱毛症患者を対象とした長期投与期間を含む国内外臨床試験2試験の併合解析【データカットオフ日:2022年5月24日(JAHO)、2022年5月10日(JAIR)】において、バリシチニブを投与された全体集団では間質性肺炎は認められませんでした2)。
<新型コロナウイルス感染症:COVID-19>
SARS-CoV-2による肺炎患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(ACTT-2試験)において、バリシチニブ+レムデシビル併用群、プラセボ+レムデシビル投与群いずれもグレード3以上の間質性肺疾患及び肺線維症は認められませんでした3)。
(参考:ACTT-2試験における有害事象の収集及び評価について)
ACTT-2試験ではCOVID-19の症状及び重症度を考慮し、有害事象についてはグレード3又は4*の事象を収集しました。また、治験薬との関連があると判断されたグレード2*以上の薬剤関連過敏症反応、グレードを問わない静脈血栓塞栓関連事象を収集しました4)。
*Division of AIDS(DAIDS)Table for Grading the Severity of Adult and Pediatric Adverse Eventsを用いて、有害事象及び重篤な有害事象の重症度を評価しました。グレード2~5は以下のとおりです4)。
グレード2:中等度
グレード3:高度
グレード4:生命を脅かす可能性のある事象
グレード5:有害事象に関連するすべての死亡はグレード5に分類
多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎患者を対象とした長期継続試験を含む国内外臨床試験2試験の併合解析【データカットオフ日:2022年中間解析時点】において、間質性肺炎は報告されませんでした2)。
《背景情報》
<効能共通>
間質性肺炎は、関節リウマチ患者ではしばしばみられる事象であり、バリシチニブの関節リウマチ患者を対象とした臨床試験における間質性肺疾患の発現率は、文献5)にて報告されている生物学的製剤の治療を受けた関節リウマチ患者における発現率の範囲内であるものの、バリシチニブのリウマチ治療薬投与後の間質性肺炎の発現が報告されています。しかし実際には、間質性肺炎の既往のある患者において「薬剤性間質性肺炎」と「既存の間質性肺炎の増悪」を鑑別することは困難であり、診断が遅れる場合が多いことが問題となっています1,2,6)。
《対処法》
<効能共通>
発熱、咳(特に乾性咳、空咳)、呼吸困難などの呼吸器症状に十分に注意してください。このような症状が出たらすぐに病院に連絡するよう、患者さんにご指導ください1,2)。「全例市販後調査のためのバリシチニブ適正使用ガイド」7)の生物学的製剤、JAK阻害薬投与中における発熱、咳、呼吸困難に対するフローチャートもご参照ください1,2)。
異常が認められた場合には、速やかに胸部X線検査、胸部CT検査及び血液ガス検査等を実施し、バリシチニブの投与を中止してください。また、ニューモシスティス肺炎との鑑別診断(β-Dグルカンの測定等)も考慮に入れ、適切な処置を行ってください1,2)。
間質性肺炎の治療は、呼吸器専門医、放射線専門医、感染症専門医等と連携しながら行ってください1,2)。
間質性肺炎の既往歴のある患者には、定期的に問診・検査等を行うなど、注意してください1,2)。
[引用元]
1. オルミエント 適正使用ガイド(関節リウマチ/多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎)
2. オルミエント 適正使用ガイド(アトピー性皮膚炎/円形脱毛症)
3. 社内資料:オルミエント 照会事項回答(COVID-19)(承認時評価資料)
4. オルミエント 申請資料概要(COVID-19)CTD2.5.5.1.1(承認時評価資料)
5. Curtis, J. R. et al.:Arthritis Res Ther., 17, 319(2015)
6. 日本呼吸器学会 生物学的製剤と呼吸器疾患・診療の手引き作成委員会 編:生物学的製剤と呼吸器疾患 診療の手引き
7. 日本リウマチ学会:全例市販後調査のためのバリシチニブ適正使用ガイド(2022年10月23日改訂版)(https://www.ryumachi-jp.com/info/guideline_barishichinibu.pdf)最終アクセス日:2023年12月20日
[略語]
ACTT-2 = Adaptive COVID-19 Treatment Trial 2
COVID-19 = SARS-CoV-2による感染症
IR = 発現率
JAK = ヤヌスキナーゼ
SARS-CoV-2 = 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2
最終更新日: June 2024
お探しの情報が見つからない場合は、こちら よりお問い合わせください。