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ガイドラインでのホルモン受容体陽性 HER2陰性転移・再発乳癌に対する一次内分泌療法としてのアベマシクリブ(ベージニオ)の位置づけは?
乳癌診療ガイドライン2026年版「CQ14.ホルモン受容体陽性HER2陰性転移・再発乳癌に対する一次内分泌療法として、内分泌療法にアベマシクリブを併用することは推奨されるか?」において、「推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:強、合意率:98%[42/43]」と位置づけられています。
[解説]
転移・再発乳癌の薬物療法に関する乳癌診療ガイドライン2026年版1)におけるアベマシクリブ(ベージニオ)の記載は以下のとおりです。
CQ14.ホルモン受容体陽性HER2陰性転移・再発乳癌に対する一次内分泌療法として、内分泌療法にアベマシクリブを併用することは推奨されるか?
<推奨>
内分泌療法にアベマシクリブを併用することを強く推奨する。
(推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:強、合意率:98%[42/43])
推奨におけるポイント
アベマシクリブを併用する際、進行・再発乳癌の治療歴がない、もしくは周術期内分泌療法終了後12カ月以降の患者では主に非ステロイド性アロマターゼ阻害薬とアベマシクリブの併用が勧められる。
一方、進行・再発乳癌の治療として内分泌療法(アロマターゼ阻害薬等)は1レジメンのみ、周術期内分泌療法終了後12カ月以内の再発患者では、主にフルベストラントとの併用が勧められる。
背景・目的
ホルモン受容体陽性HER2陰性転移・再発乳癌に対しては、生命を脅かす病変がない場合、内分泌療法が推奨される2),3)。転移・再発乳癌に対する一次内分泌療法は、術後内分泌療法の実施の有無や、その最終投与から再発までの期間に基づいて、術後に使用した内分泌療法薬の再投与の可否を判断することが多い。本CQでは、一次内分泌療法にアベマシクリブを併用することの有用性を検討した。本ガイドラインにおいては、ASCOおよびESMO、NCCNガイドラインに準じて閉経前後を分けずに検討をすることとした。
解説
1)非ステロイド性アロマターゼ阻害薬とアベマシクリブの併用療法について
(1)MONARCH-3試験
MONARCH-3試験の対象は、ホルモン受容体陽性HER2陰性の進行・再発閉経後乳癌で、術後内分泌療法から1年以上経ってからの再発、あるいは診断時遠隔転移を有するECOG PS 0-1の患者である。一次内分泌療法として、アベマシクリブ+非ステロイド性アロマターゼ阻害薬(NSAI)群(アベマシクリブ群)またはプラセボ+NSAI群(プラセボ群)に493人の患者が2対1で割り付けられた4)~6)。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)は、中央値がアベマシクリブ群28.2ヵ月に対してプラセボ群14.8ヵ月、ハザード比(HR)0.525、95%CI 0.415-0.665、p<0.0001と、有意にアベマシクリブ群で良好であった4)~6)。このほか全奏効割合(ORR)、クリニカルベネフィット割合(CBR)についても、アベマシクリブ群で良好であった。全生存期間(OS)は、中央値がアベマシクリブ群66.8ヵ月に対してプラセボ群53.7ヵ月、HR 0.804、95%CI 0.637-1.015、p=0.0664で、最終解析の両側有意水準(α=0.034)は満たさず、アベマシクリブ群で良好な傾向であったが、統計学的有意差は示されなかった7)。QOLに関しては、下痢についてのQOLの低下以外はプラセボ群との大きな違いはなかった8)。
2)フルベストラントとアベマシクリブの併用療法について
(1)MONARCH-2試験
MONARCH-2試験は、ホルモン受容体陽性HER2陰性、内分泌療法抵抗性の手術不能または再発乳癌患者669人を対象としている。二次内分泌療法もしくは早期再発一次内分泌療法(術後内分泌療法中または術後内分泌療法完了後1年以内の再発)の患者に限定して組み入れられており、一次内分泌療法の患者の割合59%程度が含まれる9),10)。アベマシクリブ+フルベストラント群(アベマシクリブ群)とプラセボ+フルベストラント群(プラセボ群)に2対1の割合でランダム化割り付けされ、主要評価項目をPFSとして実施された。PFS中央値はアベマシクリブ群16.4ヵ月に対してプラセボ群9.3ヵ月、HR 0.533、95%CI 0.449-0.681、p<0.001と、有意にPFSの延長が示された。このほかORR、CBRについても、アベマシクリブ群で良好であった。さらにOSは、中央値がアベマシクリブ群で46.7ヵ月に対してプラセボ群37.3ヵ月、HR 0.757、95%CI 0.606-0.945、p=0.01と、有意にアベマシクリブ群で良好であった10)。QOLについては、下痢によるQOLの低下を除けばプラセボ群との大きな違いはなかった11)。
推奨決定会議では、望ましい効果はPFSの改善が一貫して認められており、OS改善の傾向もあることから「大きい」、望ましくない効果は、下痢などのGrade 3以上の有害事象が増えることから「中」と判断された。エビデンスの強さは「強」、価値観は「ばらつきの可能性あり」、効果のバランスは「おそらくアベマシクリブを併用することが優れている」と判断された。医療費は高額であり、必要資源量は中等度増加すると判断された。投票では、「行うことを強く推奨する」が98%であった。以上より、推奨は「内分泌療法にアベマシクリブを併用することを強く推奨する」に決定した。
推奨の強さ(Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver.3.0準拠)
1:行うことを強く推奨する:行うことが強く勧められる
2:行うことを提案する(弱く推奨する):益と害のバランスおよび患者の価値観などを踏まえて、現場で相談し、どちらかというと行うことが勧められる
3:行わないことを提案する(弱く推奨する):「行うことを提案する(弱く推奨する)」の裏返しであり、益と害のバランスおよび患者の価値観などを踏まえて、現場で相談し、どちらかというと行わないことが勧められる
4:行わないことを強く推奨する:害が益を大幅に上回る介入であり、行わないことが強く勧められる
エビデンスの強さ(確実性)
強:効果の推定値が推奨を支持する適切さに強く確信がある
中:効果の推定値が推奨を支持する適切さに中程度の確信がある
弱:効果の推定値が推奨を支持する適切さに対する確信は限定的である
とても弱い:効果の推定値が推奨を支持する適切さをほとんど確信できない
本FAQ中のガイドライン引用については、日本乳癌学会および金原出版株式会社より転載許諾を得ています。
本邦未承認の効能・効果等に関する情報が含まれる場合がありますので、各薬剤の本邦における承認状況は最新の電子添文をご確認ください。
[引用元]
乳癌診療ガイドライン2026年版
Cardoso F, et al. 5th ESO-ESMO international consensus guidelines for advanced breast cancer (ABC 5). Ann Oncol. 2020; 31: 1623-49. (ONC60118)
Hortobagyi GN. Treatment of breast cancer. N Engl J Med. 1998; 339: 974-84. (ONC60119)
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Johnston S, et al. MONARCH 3 final PFS: a randomized study of abemaciclib as initial therapy for advanced breast cancer. NPJ Breast Cancer. 2019; 5: 5. (ONC50244)
Johnston S, et al. Abemaciclib as initial therapy for advanced breast cancer: MONARCH 3 updated results in prognostic subgroups. NPJ Breast Cancer. 2021; 7: 80. (ONC60120)
Goetz MP, et al. Abemaciclib plus a nonsteroidal aromatase inhibitor as initial therapy for HR+, HER2- advanced breast cancer: Final overall survival results of MONARCH 3. Ann Oncol. 2024; 35: 718-27. (ONC50368)
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Sledge GW Jr, et al. The Effect of Abemaciclib Plus Fulvestrant on Overall Survival in Hormone Receptor–Positive, ERBB2-Negative Breast Cancer That Progressed on Endocrine Therapy - MONARCH 2. JAMA Oncol. 2020; 6: 116-24. (ONC50269)
Kaufman PA, et al. Health-Related Quality of Life in MONARCH 2: Abemaciclib plus Fulvestrant in Hormone Receptor-Positive, HER2-Negative Advanced Breast Cancer After Endocrine Therapy. Oncologist. 2020; 25: e243-e251. (ONC50275)
最終更新日: June 2026
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