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ガイドラインでのホルモン受容体陽性HER2陰性乳癌に対する術後療法としてのアベマシクリブ(ベージニオ)の位置づけは?
乳癌診療ガイドライン2026年版「CQ5.ホルモン受容体陽性HER2陰性乳癌に対する術後療法として、内分泌療法にアベマシクリブを併用することは推奨されるか?」において、「推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:中、合意率:88%[36/41]」と位置づけられています。
[解説]
再発高リスクの乳癌における術後薬物療法に関する乳癌診療ガイドライン2026年版1)におけるアベマシクリブ(ベージニオ)の記載は以下のとおりです。
CQ5.ホルモン受容体陽性HER2陰性乳癌に対する術後療法として、内分泌療法にアベマシクリブを併用することは推奨されるか?
<推奨>
再発リスクが高い場合、内分泌療法にアベマシクリブを2年間併用することを強く推奨する。
(推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:中、合意率:88%[36/41])
推奨におけるポイント
再発リスクが高い場合とは、腋窩リンパ節転移4個以上または腫瘍径5cm以上、組織学的グレード3のいずれかを満たす腋窩リンパ節転移1~3個の患者である。
S-1(薬物CQ4参照)またはオラパリブ(薬物CQ6参照)の対象患者と重複する場合は、再発リスクと各治療法の益と害のバランス、患者の希望を考慮して選択することが勧められる。
背景・目的
ホルモン受容体陽性HER2陰性乳癌に対して術後内分泌療法にCDK4/6阻害薬であるアベマシクリブを追加する意義を検討した臨床試験が行われ、アベマシクリブの有効性が示されている。
本CQでは、術後薬物療法としてのアベマシクリブの意義について検討する。
解説
再発リスクが高いホルモン受容体陽性HER2陰性乳癌患者を対象として、手術、術前/術後化学療法、また放射線療法などの標準治療施行後、標準的な術後内分泌療法にアベマシクリブを2年間追加する意義を検証したランダム化比較試験(RCT)が1件報告されている(monarchE試験)2)。
monarchE試験は適格基準(表1)の異なる2つのコホートが含まれる。コホート1では①腋窩リンパ節転移4個以上の患者、もしくは②腫瘍径5cm以上、組織学的グレード3のいずれかを満たす腋窩リンパ節転移1~3個の患者が、コホート2では腋窩リンパ節転移1~3個、腫瘍径が5cm未満、組織学的グレード1または2、中央判定でのKi67評価≧20%のすべてを満たす患者が適格とされ、計5,637人が登録された(アベマシクリブ併用群2,808人、内分泌療法単独群2,829人)。コホート1が5,120人、コホート2は1年遅れて登録が開始され、517人であった。患者背景は、リンパ節転移1~3個の症例が40.1%、リンパ節転移4個以上の症例が59.6%であった。また、95.4%の患者が化学療法を受けており、83.9%の患者でアントラサイクリン系とタキサン系の両方を用いたレジメンが使用されていた。
表1 monarchE 試験の適格基準
*コホート2は本邦適応外
主要評価項目である無浸潤性疾患生存期間(IDFS)は、観察期間中央値54ヵ月時の中間解析で、5年IDFSとしてアベマシクリブ併用群83.6%、内分泌療法単独群76.0%、ハザード比(HR)0.680(95%CI 0.599-0.772、p<0.001)と統計学的に有意に改善した3)。IDFS の絶対差は、3年時の4.8%、4年時の6.0%に比べ、5年時は7.6%に増加した。また、死亡数はアベマシクリブ併用群で内分泌療法単独群より少なかったが(7.4% vs 8.3%)、データは未成熟で全生存期間(OS)に統計学的有意差は認められなかった。IDFSに関するサブグループ解析では、コホート1において5年IDFSで7.9%の改善、HR 0.670(95%CI 0.588-0.764)とアベマシクリブの上乗せ効果を認めた。わが国での術後療法としてのアベマシクリブは、本試験におけるコホート1の適格基準のみで承認されている。
推奨決定会議後に観察期間中央値6.3年での最新解析が報告された。OSの有意な改善が示され(HR 0.842、95%CI 0.722-0.981、p=0.0273)、7年時点のOSはアベマシクリブ併用群86.8%、対照群85.0%であった。IDFSも有意な改善が維持されている(HR 0.734、95%CI 0.657-0.820、p<0.0001)4)。
経過観察中央値42ヵ月時の有害事象報告(以下、アベマシクリブ併用群 vs 内分泌療法単独群の順で記載)では、頻度の高い副作用(全Grade)は下痢(83.6% vs 8.7%)、好中球減少(45.9% vs 5.6%)、疲労感(40.8% vs 18.0%)などであった5)。Grade 3以上の有害事象全体の発生頻度は49.9% vs 16.9%とアベマシクリブ併用群で多かった。また、注目すべきGrade 3以上の有害事象として、静脈血栓(1.4% vs 0.3%)、肺塞栓症(1.0% vs 0.1%)が報告された5)。Grade 3以上の間質性肺炎に関しては経過観察19ヵ月時に詳細な報告があり、0.4% vs<0.1%であった6)。患者報告アウトカム(PRO)は、両群ともベースラインからの変動は限定的であり、全体として差は認められなかった7)。下痢の報告に関してはアベマシクリブ併用群で増加を認めたが、その割合は3ヵ月目以降で減少傾向がみられた。
推奨決定会議では、アベマシクリブ併用により絶対差7.6%で5年IDFSの改善が認められ、望ましい効果は「大きい」と判断した。Grade 3以上の有害事象の増加はあるが、大部分は可逆的で、適切な支持療法やアベマシクリブの用量調整で対処可能であり、PRO解析で忍容性も支持されており、望ましくない効果は「中」と判断した。1つの質の高いRCTからの結果であり、エビデンスの強さは「中」、価値観は有害事象増加のためばらつく可能性があるが限定的と考え、「ばらつきはおそらくなし」と判断した。以上の検討から、効果のバランスは「介入が優れている」と判断した。アベマシクリブは2年間の投与であり、患者の医療費負担は増加する。投票では、「再発リスクが高い場合、内分泌療法にアベマシクリブを2年間併用することを強く推奨する」が88%であり、推奨はホルモン受容体陽性HER2陰性乳癌に対する術後療法として、「再発リスクが高い場合、内分泌療法にアベマシクリブを2年間併用することを強く推奨する」に決定した。
推奨の強さ(Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver.3.0準拠)
1:行うことを強く推奨する:行うことが強く勧められる
2:行うことを提案する(弱く推奨する):益と害のバランスおよび患者の価値観などを踏まえて、現場で相談し、どちらかというと行うことが勧められる
3:行わないことを提案する(弱く推奨する):「行うことを提案する(弱く推奨する)」の裏返しであり、益と害のバランスおよび患者の価値観などを踏まえて、現場で相談し、どちらかというと行わないことが勧められる
4:行わないことを強く推奨する:害が益を大幅に上回る介入であり、行わないことが強く勧められる
エビデンスの強さ(確実性)
強:効果の推定値が推奨を支持する適切さに強く確信がある
中:効果の推定値が推奨を支持する適切さに中程度の確信がある
弱:効果の推定値が推奨を支持する適切さに対する確信は限定的である
とても弱い:効果の推定値が推奨を支持する適切さをほとんど確信できない
本FAQ中のガイドライン引用については、日本乳癌学会および金原出版株式会社より転載許諾を得ています。
本邦未承認の効能・効果等に関する情報が含まれる場合がありますので、各薬剤の本邦における承認状況は最新の電子添文をご確認ください。
[引用元]
乳癌診療ガイドライン2026年版
Johnston SRD, et al. Abemaciclib Combined With Endocrine Therapy for the Adjuvant Treatment of HR+, HER2-, Node-Positive, High-Risk, Early Breast Cancer (monarchE). J Clin Oncol. 2020; 38: 3987-98. (ONC50286)
Rastogi P, et al. Adjuvant Abemaciclib Plus Endocrine Therapy for Hormone Receptor-Positive, Human Epidermal Growth Factor Receptor 2-Negative, High-Risk Early Breast Cancer: Results From a Preplanned monarchE Overall Survival Interim Analysis, Including 5-Year. J Clin Oncol. 2024; 42: 987-93. (ONC60122)
Johnston S, et al. Overall survival with abemaciclib in early breast cancer. Ann Oncol. 2025; 17: S0923-7534(25)04948-8. (ONC60117)
Johnston SRD, et al. Abemaciclib plus endocrine therapy for hormone receptor-positive, HER2-negative, node-positive, high-risk early breast cancer (monarchE): results from a preplanned interim analysis of a randomised, open-label, phase 3 trial. Lancet Oncol. 2023; 24: 77-90. (ONC50349)
Rugo HS, et al. Adjuvant abemaciclib combined with endocrine therapy for high-risk early breast cancer: safety and patient-reported outcomes from the monarchE study. Ann Oncol. 2022; 33: 616-27. (ONC60123)
Tolaney SM, et al. Long-term patient-reported outcomes from monarchE: Abemaciclib plus endocrine therapy as adjuvant therapy for HR+, HER2-, node-positive, high-risk, early breast cancer. Eur J Cancer. 2024; 199: 113555. (ONC60124)
最終更新日: June 2026
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